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障害者雇用について

 

1. はじめに

現代社会において、メンタル疾患(うつ病、不安障害、双極性障害、統合失調症など)を抱える人は増加傾向にあります。
厚生労働省の調査によると、日本における精神疾患の患者数は年々増えており、働く世代の中にも多くの当事者が含まれています。
こうした状況の中で、メンタル疾患を抱える人が安定して働くための手段として「障害者雇用制度」が注目されています。

障害者雇用とは、障害のある人が能力を活かしながら働けるよう、企業が一定の配慮をした上で雇用する仕組みです。
メンタル疾患の場合、「精神障害者保健福祉手帳」を取得することで、障害者雇用枠での就職が可能になります。
企業側も、法定雇用率の達成を目的として障害者雇用を推進しており、双方にとってメリットのある制度といえます。

しかし、メンタル疾患を持つ人が職場で長く働き続けるためには、適切な配慮やサポートが必要です。
職場環境や業務内容が自分に合っているか、働きやすい制度が整っているかを見極めることが、無理なく働き続けるためのポイントとなります。

本記事では、メンタル疾患を持つ人が障害者雇用を通じて働く際のポイントや、仕事探しの方法、企業のサポート体制などについて詳しく解説していきます。
自分に合った働き方を見つけるための一助となれば幸いです。

 

 

 

 

2. メンタル疾患と障害者雇用枠

メンタル疾患を持つ人が障害者雇用枠で働くためには、まず「精神障害者保健福祉手帳」の取得が重要となります。
この手帳を持つことで、障害者雇用枠での就職が可能になり、企業側も法定雇用率のカウント対象として受け入れることができます。

精神障害者保健福祉手帳の取得条件と手続き

精神障害者保健福祉手帳を取得するには、一定の診断基準を満たす必要があります。
通常、診断書や通院記録などが必要であり、自治体の窓口で申請手続きを行います。
手帳の等級は1級から3級まで分かれており、症状の程度によって決定されます。

また、取得後は定期的な更新が必要であり、更新手続きを怠ると手帳が無効となる場合があります。
更新には再度診断書の提出が求められることが多いため、主治医と相談しながら準備を進めることが大切です。

障害者雇用枠のメリットとデメリット

障害者雇用枠で働くことには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 企業側が合理的配慮を提供しやすい環境が整っている。

  • 勤務時間や業務内容に柔軟性があることが多く、体調管理がしやすい。

  • 通院やリワークプログラムへの参加など、治療と仕事の両立が可能。

  • 精神疾患への理解がある職場環境が整っていることが多い。

デメリット

  • 一般雇用枠に比べて給与水準が低く設定されることがある。

  • 仕事内容が限定される場合があり、キャリアアップの機会が少ない可能性がある。

  • 周囲の理解が十分でない職場も存在し、環境によってはストレスを感じることがある。

  • 一部の企業では、形式的な雇用にとどまり、適切な業務を与えられないケースも報告されている。

 

障害者雇用枠を選択する際には、自分の希望やライフスタイルに合った職場を選ぶことが重要です。
特に、企業のサポート体制や職場環境について事前に情報収集を行い、自分にとって最適な選択肢を見極めることが必要です。

 

企業側の受け入れ体制の現状と課題

近年、企業側の障害者雇用に対する理解は進んでおり、メンタル疾患を持つ人が安心して働ける環境作りが進められています。
特に、大手企業では障害者向けのサポート制度を整えているところも増えており、例えば以下のような取り組みが見られます。

  • 専門の人事担当者やカウンセラーの配置

  • 柔軟な勤務時間制度やリモートワークの導入

  • 社内研修を通じた障害への理解促進

  • 業務量の調整や適切なフィードバックの提供

一方で、中小企業では受け入れ体制が整っていない場合もあり、実際に働き始めてから課題に直面するケースもあります。
特に、メンタル疾患に対する理解が不十分な職場では、適切なサポートを受けられないこともあるため、就職活動の際には企業文化や支援体制を十分に確認することが大切です。

また、障害者雇用枠における職務内容の幅を広げるために、職業訓練やスキルアップの機会を提供する企業も増えています。
特にIT分野や事務職、カスタマーサポートなど、比較的柔軟に働ける職種が増えているため、自身の強みを活かせる職場を選ぶことが求められます。

このように、メンタル疾患を持つ人が障害者雇用枠で働くためには、手帳の取得や企業の受け入れ状況をしっかりと理解し、適切な職場を選択することが重要です。

 

 

 

 

 

3. どのような仕事があるのか?

障害者雇用枠では、さまざまな職種が用意されていますが、主に次のような仕事が一般的です。

一般的な職種

障害者雇用枠で採用される仕事は多岐にわたりますが、代表的な職種として以下のようなものがあります。

  • 事務職(データ入力、書類整理、経理補助など)

    • 比較的負担が少なく、安定した業務内容が多い。

    • PCスキルがあると有利。

  • IT関連(プログラミング、システム運用、ヘルプデスクなど)

    • リモートワークが可能な場合もあり、柔軟な働き方がしやすい。

    • 専門スキルを身につけることで、高収入のチャンスもある。

  • 接客・販売(レジ業務、品出し、カスタマーサポートなど)

    • 人と関わることが好きな人向け。

    • 体調に応じたシフト調整ができる場合もある。

  • 軽作業(清掃、ピッキング、仕分けなど)

    • 身体的負担が少なく、シンプルな業務が多い。

    • 集中して取り組める環境が整っている。

  • 在宅勤務(ライティング、デザイン、コールセンターなど)

    • 自宅で働けるため、通勤の負担がない。

    • 自己管理能力が求められる。

 

フルタイム vs. パートタイム

勤務形態は大きく分けてフルタイムとパートタイムがあります。
それぞれのメリットとデメリットを理解し、自分に合った働き方を選ぶことが重要です。

  • フルタイム勤務

    • 安定した収入が得られる。

    • 福利厚生が充実していることが多い。

    • 負担が大きくなる可能性があるため、無理のない範囲での就業が必要。

  • パートタイム勤務

    • 勤務時間を調整しやすく、体調に応じた働き方ができる。

    • 収入は限られるが、負担を軽減できる。

 

在宅勤務やテレワークの可能性

近年、在宅勤務やテレワークの導入が進んでおり、メンタル疾患を持つ人にとって働きやすい環境が整いつつあります。
在宅勤務のメリットとしては、通勤の負担が減る、業務に集中しやすい、ストレスの軽減などが挙げられます。
また、在宅勤務可能な職種として、ライティング、デザイン、プログラミング、オンラインカスタマーサポートなどがあり、スキルを身につけることで選択肢を広げることができます。

 

 

 

 

 

 

4. 仕事探しの方法

メンタル疾患を抱えながら適切な仕事を見つけるためには、いくつかの方法を活用することが重要です。

1. ハローワークの障害者向け求人

ハローワークでは、障害者向けの求人を紹介する専門の窓口があります。
障害者雇用枠の求人を検索できるだけでなく、面接対策や職場実習のサポートも受けられます。
また、専門の就職支援員が相談に応じてくれるため、自分の状況に合ったアドバイスを受けることが可能です。

  • メリット:公的機関が提供するため信頼性が高く、企業側も法定雇用率を考慮して積極的に採用する傾向がある。

  • デメリット:希望する職種が限られることがあり、競争率が高い場合もある。

2. 就労移行支援事業所の活用

就労移行支援事業所では、就職活動の支援や職業訓練を受けることができます。
専門のスタッフがカウンセリングを行い、個々の状況に合わせた就労支援を提供してくれます。
職場実習や模擬面接を通じて、実際の就労環境を体験する機会も得られます。

  • メリット:就労スキルの習得が可能で、職場実習を通じて適性を確認できる。

  • デメリット:一定の利用期間が設けられており、長期的な支援が難しい場合がある。

3. 民間の転職エージェントや求人サイト

近年では、障害者雇用に特化した転職エージェントや求人サイトも増えています。
これらのサービスを活用することで、自分のスキルや希望に合った仕事を見つけやすくなります。
転職エージェントを利用する場合は、キャリアカウンセリングや応募書類の添削、面接対策などのサポートを受けることができます。

  • メリット:非公開求人や特定の業界に特化した求人を紹介してもらえる。

  • デメリット:エージェントとの相性によって、希望に沿った求人を得られない場合がある。

 

メンタル疾患を持ちながら働くためには、自分に合った仕事を見つけることが重要です。
ハローワークや就労移行支援事業所、転職エージェントなどの多様な手段を活用しながら、無理のない働き方を模索しましょう。
また、情報収集を怠らず、実際に働いている人の意見を参考にすることで、自分に最適な職場を見つけやすくなります。

 

 

 

 

 

 

5. 企業や社会のサポート制度

メンタル疾患を持つ人が安心して働けるよう、企業や社会にはさまざまなサポート制度が整備されています。

1. 職場での配慮(合理的配慮)

企業は、障害を持つ従業員が働きやすいように「合理的配慮」を提供することが求められています。
合理的配慮とは、過度な負担をかけずに働きやすい環境を整えるための措置を指します。

  • 勤務時間の柔軟化:通院や体調管理のために、勤務時間を調整できるようにする。

  • 業務量の調整:過度な負担にならないよう、業務内容や量を調整する。

  • 職場環境の整備:静かな作業環境の提供や、リモートワークの許可など。

  • メンター制度の導入:職場内でサポート役となるメンターを配置し、相談しやすい環境を作る。

2. 障害者雇用納付金制度と企業の役割

日本では、一定規模以上の企業に対して障害者の雇用が義務付けられています。
この制度に基づき、法定雇用率を満たしていない企業は納付金を支払い、逆に一定以上の障害者を雇用している企業には助成金が支給される仕組みとなっています。

  • 法定雇用率:企業は一定割合の障害者を雇用する必要がある。

  • 納付金制度:未達成企業は納付金を支払い、達成企業には奨励金が支給される。

  • 助成金の活用:障害者を雇用する企業には、職場環境の整備や研修に対する助成金が用意されている。

3. 障害者雇用を支援するNPOや相談窓口

多くのNPO団体や公的機関が、障害者の就労支援を行っています。
こうした団体を活用することで、より適切な職場を見つけることができる可能性があります。

  • 就労支援センター:障害者向けの職業相談や職場実習の支援を提供。

  • 地域のNPO:職業訓練や職場定着支援を行い、働く上での悩みを相談できる場を提供。

  • オンライン相談窓口:遠方に住んでいる人でも利用しやすいオンライン相談サービスが増えている。

4. 公的な支援制度の活用

メンタル疾患を抱える人が利用できる公的な支援制度も多く存在します。

  • 障害年金:一定の条件を満たすことで、生活を支えるための年金を受給可能。

  • 生活保護制度:経済的に困難な状況にある場合、福祉制度を活用できる。

  • 障害者手帳による各種割引:交通機関や公共施設の利用料割引などが受けられる。

 

メンタル疾患を持つ人が働きやすい環境を整えるために、企業や社会にはさまざまなサポート制度が整備されています。
合理的配慮を活用しながら、自分に合った職場を選び、適切な支援制度を利用することで、安定した就労を実現することが可能です。

 

 

 

 

 

 

6. 働く上での注意点と対策

メンタル疾患を抱えながら働く場合、体調管理や職場でのストレス対策が重要になります。
ここでは、働く上で注意すべきポイントや、長く安定して働くための対策について解説します。

1. ストレス管理とセルフケア

メンタル疾患を抱える人にとって、ストレス管理は非常に重要です。
日常的に自分の状態を把握し、ストレスを軽減する工夫をすることで、仕事の継続がしやすくなります。

  • 適度な休憩の確保:長時間の業務が負担にならないよう、定期的に休憩を取る。特に集中力が必要な業務では、1時間ごとに短い休憩を入れるとよい。

  • リラクゼーションの習慣化:深呼吸、瞑想、軽い運動などでリラックスする時間を持つ。ヨガやストレッチを日常的に行うと、心身の緊張をほぐす効果が期待できる。

  • 十分な睡眠:睡眠不足はストレス耐性を低下させるため、規則正しい生活リズムを心がける。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスした状態で眠れるようにする。

  • 食生活の改善:バランスの取れた食事を意識し、ビタミンやミネラルをしっかり摂取する。特に、精神の安定に関わるビタミンB群やオメガ3脂肪酸を含む食品を積極的に取り入れる。

  • 自分のペースを守る:無理をせず、自分に合ったペースで仕事を進める。周囲と比較せず、自分自身の状態を最優先に考えることが大切。

2. 無理なく働くための環境づくり

自分にとって働きやすい環境を整えることも、安定した就労を継続するためのポイントです。

  • 職場とのコミュニケーション:上司や同僚と適切な距離感を保ちつつ、必要なサポートを求める。特に、自分の苦手なことや体調の変化について事前に伝えておくとよい。

  • 業務量の調整:負担が大きすぎる場合は、業務内容を相談しながら調整する。必要に応じて、業務の分担や作業時間の調整を依頼する。

  • ワークライフバランスの確保:仕事とプライベートのバランスを保つことで、過度なストレスを回避する。特に、休日にはリラックスできる時間を確保し、趣味や運動を取り入れるとよい。

  • リモートワークの活用:可能な場合は在宅勤務を取り入れることで、働きやすい環境を確保する。自宅での作業環境を整え、快適に仕事ができるよう工夫する。

3. 周囲とのコミュニケーションの工夫

職場での良好な人間関係は、働きやすさに大きく影響します。
コミュニケーションを工夫し、安心して働ける環境を作りましょう。

  • 自分の状態を伝える:信頼できる同僚や上司に、体調や仕事の進め方について相談する。適切な配慮を求めることで、無理なく働き続けられる。

  • 無理をしない姿勢を持つ:過度な責任を負わず、必要なときに適切なサポートを求める。完璧を目指すよりも、持続可能な働き方を重視する。

  • サポートグループの活用:同じ悩みを持つ人々と情報交換し、精神的な支えを得る。地域の支援団体やオンラインコミュニティに参加し、交流の場を広げるとよい。

 

メンタル疾患を抱えながら働くためには、ストレス管理や適切な環境づくりが重要です。
自分の状態を正しく理解し、無理なく働ける環境を整えることで、長く安定して仕事を続けることが可能になります。

また、職場での配慮や支援を積極的に活用しながら、より良い働き方を模索していきましょう。

 

 

 

 

 

7. まとめ

本記事では、メンタル疾患を持つ人が障害者雇用を活用して働くためのポイントについて解説してきました。
最後に、重要なポイントを整理し、より良い働き方を見つけるためのヒントをまとめます。

1. 自分に合った働き方を見つける

  • 自分の体調や働ける時間、業務内容の適性を把握する。

  • フルタイム・パートタイム・在宅勤務など、多様な働き方を検討する。

  • ストレスを軽減できる職場環境を選び、無理なく継続できる仕事を探す。

2. 活用できる支援制度を知る

  • 精神障害者保健福祉手帳を取得し、障害者雇用枠の活用を検討する。

  • ハローワークや就労移行支援事業所を利用し、職業訓練や仕事探しの支援を受ける。

  • 企業の合理的配慮(勤務時間の調整、業務内容の配慮など)を活用する。

  • 障害年金や生活保護など、公的支援制度を知り、必要に応じて利用する。

3. 職場でのコミュニケーションを大切にする

  • 信頼できる上司や同僚に相談し、体調や業務内容の調整を行う。

  • 無理をせず、自分の状態を正直に伝え、適切なサポートを求める。

  • 同じ悩みを持つ仲間と交流し、情報交換や精神的な支えを得る。

4. 長く働き続けるための工夫

  • ストレス管理を意識し、適度な休息やリラクゼーションを取り入れる。

  • ワークライフバランスを考え、仕事とプライベートの両立を目指す。

  • 体調の変化に柔軟に対応し、必要に応じて働き方を見直す。

 

メンタル疾患を抱えながら働くことは決して簡単ではありませんが、適切なサポートや環境を活用することで、自分らしく働くことが可能になります。
無理をせず、自分に合った仕事や働き方を見つけ、心身の健康を大切にしながらキャリアを築いていきましょう。

本記事が、皆さんの働き方を考える一助となれば幸いです。

 

 

 

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